実家の長崎にて、祖母のお見舞いに老人ホームへ行った時
シーンと静まり返ったフロアの隅っこにグランドピアノが置いてあった。
当時はコロナ禍で、普段は入居者の方々が集って賑やかな場所のはずが
誰もおらずひっそり、電気すらついていなかった。
暗がりのその空間を遠目に、「いつかここで弾きたい」そう思った。
あれから4年
神奈川のとあるシニアレジデンスで
あの時の思いが形になった。
ご縁があり、入居者の方々に向けて演奏会をすることになったのだ。
いつものピアノ連弾コンビで40分枠。
一音目をポーンと奏でた瞬間、祖母を思い出し涙が溢れそうになる。
「おばあちゃん、弾けたよ」
終演後、車椅子のおばあさまが挨拶をしたいからとお見送りに来てくださった。
にこにこ笑顔で握手の手を差し出しながら
「楽しかったです。また来てね」と。
「また来ますね」
はやめに ここに。
馬場 舞子