実は秘かに抱いている野望がある
江戸時代以前に建立された天守閣が現存する十二の城郭
そのすべてをこの目で確かめたいと思い始めて20年くらいが経つのだろうか
先日、五月晴れの松本城を訪ねた
澄んだ青空と黒色の威容を保つ天守のデザイン
コントラストが実に美しく、内堀のほとりにしばし佇んだ
内部には、建立当時手斧（ちょうな）で丁寧に整えられた梁や柱
連子窓や板戸なども輝きを保ったまま保存されている
領地を守り、権力をもって財を成した象徴ではあるが
貴重な文化財には変わりない
純粋に、うっとり見惚れる建築美を堪能した
丸岡、松山、丸亀、そして松本と四天守をこの目に焼きつけた
残すは八天守
この野望の火は消えそうもない
小田 正信
